脳卒中のリハビリでは様々な練習を経て姿勢や動作、活動の獲得を図ります。
その中でも麻痺側の関節運動を伴う練習と同じく重心を移動する練習は必ず行うことでしょう。
重心をうまくコントロールすることで少ない力でスムーズな動きが獲得できます。
座った姿勢で前後左右に移動したり、立った姿勢で同じように動いたり、
ステップ位でも行ったり様々な設定がありますが、
今回は歩行の立脚中期の改善に対して行うことが多い
立位での左右重心移動練習についてポイントを紹介していきます。
文字通り立位で左右の重心移動をする練習ですが、
先に挙げた通り歩行の立脚中期で骨盤が外側にスウェーしてしまう例や
立位で麻痺側下肢の支持が不安定な場合に行うことが多いです。
この時、動き方は自動運動であったり、自動介助運動であったりだと思いますが、
どんな風に動けば正解なのでしょうか。
姿勢の基本と重心移動の基本から紐解いていってみましょう
効率の良いいい姿勢とはどのような姿勢でしょうか。
一般的には楽であり、効率的な姿勢です。
まっすぐ綺麗に立っていたとしても、全身をガチガチに固めている姿勢では楽ではありませんし、
次の動作に移る際に動きづらく効率的な姿勢とはいえません。
立位においては基本的に解剖学的指標を参考にすると良いでしょう、
矢状面では耳垂-肩峰-大転子-膝蓋骨の後ろ-外果の前方、
前額面で外後頭隆起-棘突起-殿裂-両膝内側の間-両足部内果の間のラインが正中のラインです。
このライン上に位置していると、支持基底面の直上に質量中心が位置し力学的に効率的な位置といえます。
左右どちらかに重心移動をした際はではどんな位置であれば良いのでしょうか、
移動した側の足部の上に質量中心が位置することは姿勢の基本から明らかですが
骨盤の動きに1つポイントがあります。
単純に骨盤を水平に左右に誘導すると、
上半身の質量中心が移動側の足部の上にくるまで多くの移動距離を実は要します。
骨盤を水平に保ち身体を棒状のイメージで動いてみると
普段自分が歩いている時よりも左右に大きく振れてしまうことが分かります。
重心移動の動きを紐解くヒントは歩行分析です。
歩行で代表的な書籍といえば「観察による歩行分析」ですが、
その中で歩行の立脚側では骨盤は側方に5-7度程度傾斜します。
この骨盤の傾斜が実は非常に重要です。
意識するほど大きな動きではないですが
骨盤が僅かに傾斜することにより大きく移動をしなくても
左右の足に重心を移すことができます。
骨盤の傾斜が重要であることを紹介しました。
ただ、骨盤の傾斜を意識してもらい重心移動の練習を行ってもうまくいきません。
何故なら意識的に動かす部分では無く、
重心の移動に合わせて上半身の重みや下肢の重みで自然と傾斜するようになっているからです。
臨床で実際どのように促通するかの1つはこちらで傾斜を他動誘導する方法です。
他動で誘導する中で患者さんが良い動かし方であることを実感し、
徐々に介助量を減らしながら患者さんの反応を引き出していきます。
ここでの注意点は
傾斜を介助でしてもらった方が楽に重心移動が行えていることを患者さんと共有することと、
傾斜する範囲はごくわずかなので無理やり介助しすぎないことです。
どのくらいの量を傾斜させれば良いかは
普段から同僚の骨盤を触り重心移動してもらうことで
どのくらい傾斜するのかを手で感じ取り身体で覚えていくことを行ってみてください。
骨盤の傾斜を促す方法はもう一つあり、
それは関節がスムーズに動くように調整をすることです。
骨盤の傾斜は股関節の内外展と腰仙部や腰椎の側屈により規定されます。
脳卒中後遺症者の場合、安定性を高めるためにこれらの部分は固めることが多く、
これらの関節をスムーズに動くように
関節周囲の筋や軟部組織のコンディションを整えることも非常に重要です。
股関節は比較的介入することが多いと思いますが、
腰部の前額面(側屈)にフォーカスする機会は少ないかも知れません。是非試してみてください。
立位での左右重心移動練習のポイントについてお話ししました。
左右のイメージのみですと単純な並進運動をしてしまい、非効率的な動作の学習を進めているかも知れません。
普段の練習の際にどんな関節の動きをしている確認しながら行ってみてください。
お読みいただき有難うございました。
CCRA代表 福田俊樹