右片麻痺と左片麻痺 その1〜半側空間無視について〜

2019年09月03日 福田俊樹

右片麻痺と左片麻痺、

実際介入する際に考慮するのは利き手や非利き手のだけの問題ではなく、

右半球、左半球それぞれの特性を理解した上で介入する必要があります。

 

右片麻痺は左半球の、左片麻痺は右半球の損傷の影響を多く受けることになりますが、

今回は左右の半球の特徴を理解することでより適切に介入を行える事をお伝えします。

 

左片麻痺の特徴

右半球損傷で代表的な後遺症といえば、半側空間無視です。

 
半側空間無視は方向性の注意障害といわれており、

左半球は右側方向への注意を向けることが出来、右半球は両側方向への注意を向けることができます。

ですので、右半球が損傷すると左方向への注意が欠落してしまいます。

 

実はこの半側空間無視は姿勢や動作にも影響を及ぼします。

端座位や歩行にて麻痺側が後退していることを運動麻痺や姿勢コントロールの障害とだけ捉えずに、

左片麻痺の場合はこの注意障害を評価する必要があることを念頭に入れる必要があります。

 

半側空間無視の様々な分類

半側空間無視とひとえにいっても、

食事の左半分残す人、移動中身体が左にぶつかりそうになる人、

左側の空間に目を向けることができない人、など様々なタイプがあります。

 

タイプが違う=原因が異なる、ということで介入方法も全く異なってくる訳です。

 

自分が良く確認する分類は

 

「自己中心型/物体中心型」

「運動性/感覚性」

「personal space / peri personal space /extra personal space」

 

の3つですが、割と見落としがちである最後のpersonal spaceの分類について紹介したいと思います。

 

パースナルスペース(personal space)とは

身体のその周囲の空間の分類になります。

パーソナルスペースは身体自体の空間、ペリパーソナルスペースは手の届く範囲の空間、

エクストラパーソナルは手の届かない視認できる空間のことを指します。

 

半側空間無視のテストバッテリーというと線分二等分線や模写などがメジャーですが、

これらは全てペリパーソナルスペースの評価であり、

その他の空間に無視があるかどうか気にかけることは少ない印象を受けます。

 

パーソナルスペースの無視への評価と介入

パーソナルスペースに無視があると

無視のある身体部位が姿勢や動作に参加せず活動に制限が起こります。

 

もっとも簡単な評価としては自分の身体の部位を指でさせるかどうかです。

「左の肩をさしてください」と指示して的確にさせる場合はパーソナルスペースの無視がないといえます。

 

また指示した際に、手首などから辿るように肩を触った場合は無視ではなく、

身体失認の症状が疑われますので、より詳細な評価が必要です。

 

基本的に無視への介入の方向性ですが、

本人が知覚できるもの、身体の右側や左側で知覚できる感覚の種類から課題を組み立てていきます。

 

無視をしている左側から介入をしたり、

視覚情報を無視している場合に視覚を用いた課題を出していたり

することは過負荷な課題だといえるでしょう。

 

介入方法の一例

介入するイメージ例として

左片麻痺で4点杖と短下肢装具を利用しぶん回し歩行を

している方を想像してみましょう。

 

座った姿勢で左側が引けた状態となっていて、

真っ直ぐにして下さいと指示してもうまく修正できないような方です。

 

右側臥位となり、完全な側臥位、少しうつ伏せ気味、やや仰向け気味へと

バランスをとりながら移動してもらいましょう。

 

ポイントは移動中で身体の重みを右半身で感じとりましょう。

この際に骨盤に着目します。

 

骨盤は右側、左側がありますが、

一つの塊となっていますので左側への意識が作りやすい部分といえます。

 

右半身で重みを感じ取ることで骨盤の左側の認知が進むアプローチをなります。

 

まとめ

右麻痺でも、左麻痺でも同じ麻痺の程度(動きのレベル)であれば

同じプログラムを行ってしまいがちですが、それぞれの特徴を理解することで

より適切な介入を行えるようになります。

 

次回は右片麻痺の特徴を上げたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。

 

CCRA代表 福田俊樹