麻痺側遊脚期のココを確認!〜ぶん回しシリーズその3〜

2018年01月25日 admin_ccra

ぶん回しシリーズ第3回。

今回はぶん回し歩行の3つの要因の3つ目
「麻痺側の遊脚期の問題」について考えてみましょう

 

今までのぶん回しシリーズのご確認はこちらから

「第1回:ぶん回し歩行3つの要因・運動学から紐解くぶん回し」

「第2回:非麻痺側下肢に着目する理由」

 

【遊脚期の筋活動】
まず遊脚期は実際どのような筋活動なのか、おさらいしておきましょう。

足先が床から離れて前に踏み出すために、
足部では前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋が活動し足関節が背屈していきます。

それとともに、長内転筋と恥骨筋、薄筋と縫工筋が活動して股関節と膝関節が屈曲することによって、
足先が地面を引きずらずに振り出しが行えています。

では実際、ぶん回し歩行になってしまう場合はどのような活動になっているのでしょうか?

 
【足関節背屈筋の弱化】
もっとも代表的な課題で、まずアプローチを行うところでしょう。
下垂足になり地面に引っかかってしまう部分をぶん回すことによって回避する動きが起こります。

介入方法とすれば
・電気刺激
・装具療法
・反復促通療法
・姿勢応答からの促通
・タッピング
など様々ありますがどれを行うにしても大事な点が2つ。

1.しっかりと動作筋の長さを作っておくこと。(短縮している場合が多い)
2.質は大事だが量はもっと大事。(多く刺激を入れる)

 
【足関節背屈の可動域制限】

立脚後期から遊脚中期に至るまで、足関節は底屈30度から0度まで変化する。
つまり背屈制限0度以上であれば介入が必要であることがわかります。

距腿関節の可動域はもちろんですが、脛腓関節の可動性のチェックも必要、
脛腓関節が十分に動くことによって距腿関節が動きやすくなってきます。

※上図
左が背屈にともない腓骨が開排、挙上、外旋し、右が底屈にともない腓骨が接近、下制、内旋する

 
【二関節筋の短縮】
冒頭で、遊脚期には薄筋や縫工筋が働き、股関節・膝関節の屈曲を行っていると
紹介しましたが、正常な歩行速度(4km/h)では殆ど筋活動は起こりません、

身体にかかる慣性以上に力が必要な場合、
つまりより速度の早い歩行や、ゆっくりとした動きの場合に筋活動を要求します。

その際に薄筋、縫工筋、大腿直筋やハムストリングスが周囲の大腿筋群と癒着を
引き起こしていれば筋活動をうまく引き起こすことができず、
周囲の筋肉とともに同時収縮を起こし棒状のぎこちない振り出しとなり、
ぶん回し歩行となってしまいます。

 
【固有受容感覚の低下】

固有受容感覚とは、筋・関節や靭帯に存在する固有の感覚器であり、
筋の長さやその変化、また張力などを大脳や小脳などに送ることで、
その瞬間における適切な身体の反応をプログラムし実行しています。

運動方向が切り替わる際には固有受容感覚がスイッチと一つとして機能しており、
前遊脚期から遊脚初期において
足関節底屈方向から背屈方向へ運動が切り替わる際(図の赤丸)にも、働いています。

 
【麻痺側股関節外転筋の短縮】
バイオメカニカル的な単純な問題です。
短縮している分、遊脚時に股関節が外転しぶん回しの軌跡となってしまいます。

起居動作の際に、ベッドから足を下ろす場面で麻痺側下肢が十分に脱力できない場合、
この問題点にもアプローチした方がよいでしょう。

ぶん回し歩行のみならず、麻痺側立脚時の安定性にも影響が大きいです。

 
【下部体幹の不安定性】
麻痺側下肢が浮いている間、骨盤でその重み分を支えておく必要があります。
この時、下部体幹が不安定だと骨盤が麻痺側へ落ち込んでしまい足が地面に接してしまうので、
回避するためぶん回し歩行となります。

腹斜筋や腹直筋、脊柱起立筋などが直接作用する筋ですが、
個別の筋で考えるというよりも、腹横筋、横隔膜、多裂筋なども含め、
腹壁が構築されているか、一定の筋トーンを保てているか
を考えていった方が介入が成功しやすいです。

【ぶん回し歩行の総まとめ】
麻痺側のぶん回し歩行は以下にまとめられる
また、1つの問題で起こるのでは無く、複数の要素が絡み合っている。

●麻痺側立脚期の問題
立脚後期での足部周辺に着目
・下腿三頭筋は活動できているか
・距骨下関節はスムーズに動くか
・横足部関節は外反方向へ可動域があるか

●非麻痺側立脚期の問題
立脚が伸展位になっているか着目
・股関節のアライメントがずれていないか
・杖に過剰に頼っていないか

●麻痺側の遊脚期の問題
・足関節背屈筋群は活動できるか
・足関節、脛腓関節の可動域は保たれているか
・股関節、膝関節周囲筋の癒着はないか
・感覚(固有受容感覚)が低下していないか
・股関節外転筋が短縮していないか
・下部体幹は安定しているか

実はその他も見るべきポイントはありますが、
ボリュームが多すぎるのて追伸にちょっとだけ紹介します。

 

今回もお読み頂きありがとうございました。
また、今回の3部作のように紹介してほしい動作などありましたら、
お気軽にお問い合わせやCCRAのFacebookページからご連絡いただけたらと思います。

CCRA代表 福田俊樹

参考資料:観察による歩行分析、カパンジー機能解剖学、プロメテウス解剖学アトラス

 

追伸1
実は他にもチェックするポイントは前庭脊髄路の過活動や麻痺側の身体認知など多数あります。
どんな問題に対してアプローチするときも何が原因として挙げられるか、徐々に増やしていけると自信を持ってアプローチできるようになってきます。