非麻痺側に着目する理由〜ぶん回し歩行になる3つの要因②〜

2017年12月24日 admin_ccra

ぶん回しシリーズ第2弾。

今回はぶん回し歩行の3つの要因の2つ目
「非麻痺側の立脚期の問題」について考えてみましょう

前回はぶん回し歩行になる3つの要因のうちの、
「麻痺側の立脚期の問題」について紹介しました。

麻痺側の立脚後期に要因があり、
その中でも足部でいくつか確認するポイントがあるという事でしたね。

前回コラムはこちらから
>>>「ぶん回し歩行になる3つの要因①」

【何故非麻痺側に着目するか】

ぶん回し歩行、問題が起こっているのは麻痺側なのに、何故、非麻痺側に着目する必要があるのでしょうか。

身体は右側と左側を合わせて一つです、身体を動かす際はからなず両方とも使います。
運動のスキルを習熟していく為には非麻痺側を含めた身体の使い方を考えていかないと、
うまくいかない場合が多いです。

特に歩行の場合は重力に抵抗して身体を伸展しておく必要があるのですが、
非麻痺側が屈曲位で固定されてしまうことが時折見かけます。

非麻痺側が屈曲位(赤線)だと、自然と遊脚期である麻痺側は地面に触れてしまい易くなる(青い点線分)ため、
足先がすらないようにぶん回し歩行を選択してしまう訳です。

具体的にぶん回し歩行時ではどんな非麻痺側の状態があるか例を見ていってみましょう。

【非麻痺側股関節の屈曲位固定】
イメージをしてください。

公園を歩いていると、野球のボールが転がってきました。
10m先にはグローブをはめている少年がいます、
さぁ、ボールを投げ返してあげましょう。

この時、あなたのボールを持っていない方の手はどこにありますか?

前ですよね、つまり肩関節は屈曲してきます。

歩行の時も同様で麻痺側を降り出す際に、なんとか出そうと頑張ると、
非麻痺側の股関節は屈曲して上半身と麻痺側の脚を引き付けるようにして
振り出す動作となります。

この動作の繰り返しによって股関節屈曲位での固定が強まり、
麻痺側のクリアランス低下や体幹の抗重力伸展活動の低下を招くのです。

【杖の持ち方】
杖を用いて歩行する際に、こんな姿をよく見かけることはないでしょうか。

杖で支持する際により安定感を得る為に床に押し付けながら、
引き付けるように腕を使います。

そうすると上肢のみならず体幹も屈曲位となってしまい、麻痺側遊脚時の
体幹のコントロールが不十分となり麻痺側のクリアランス低下を招きます。

【股関節からの介入の方法】

股関節の偏位は上図のように臼蓋に対して骨頭が腹側(+外側や内外旋)にズレている状態です。

このズレを修正すること、
つまり屈曲位固定に対して正中位に、つまり大腿骨頭に対して骨盤の臼蓋が適合し、
骨頭の上で上半身の重さが支持できるよう目指します。

そうすることで股関節周囲の筋・靭帯の固有受容器が働き、
股関節の周囲筋や下肢伸筋全体の活性化が図れます。

具体的には、屈曲位固定の修正の為に
大腿直筋、腸腰筋の筋の長さを出し(特に黒丸で囲まれた部分)、
関節包後方の柔軟性を引き出していきます。

その後は立位、または非麻痺側が前のステップ位で骨頭の上に上半身が乗る位置を探しながら
下肢の伸展反応と股関節周囲筋の活動を高めていきます。

十分に高めた状態で徐々に大きく重心移動を行ってもらい、より適応させていきましょう。

【上肢からの介入の方法】

「転ばぬ先の杖」とはよく言ったもので、杖はあくまでサポートするものです。
ただ、非麻痺側の上肢は使いやすい為、思わず必要以上に荷重をかけて安定性を求めてしまいます。

そこでより良い歩行の獲得の為には「脚で支持する」感覚をもってもらう必要があります。

杖を持って歩行する前に、静止立位にて足裏と杖にどの程度体重が乗っているか感じてもらい、
杖が多いようだった場合、足裏へどこまで移せるか、
また、身体が垂直な状態のまま遠くに杖をついてみたり、壁についてみたり

そもそも立位をとった時点で上肢に力が入っている場合はテーブルで支持を行い、
手のひらをついた状態から徐々に指先で支えるように難易度をあげていったり、
外旋位で支持して体幹の伸展を強調したり

状況に応じて様々な設定で杖の使い方を練習できるとよいでしょう。

【まとめ】
・歩行時に非麻痺側立脚が屈曲位だと脚を引きずる、またはぶん回しを起こしやすくなる
・股関節に対してはアライメントに着目しよう
・杖の使い方が屈曲優位となっていないか確認しよう

お読み頂きありがとうございました。

次回はぶん回し歩行の3つ目の要因、
「麻痺側の遊脚期」について紹介していきます。

CCRA代表 福田俊樹

参考資料:観察による歩行分析、カパンジー機能解剖学、プロメテウス解剖学アトラス

追伸1
関節包のアプローチはセミナーでも紹介しています。
直接アプローチすることは難しいので、「骨」を介して行うとスムーズです。

追伸2
今回紹介していませんが、非麻痺側の立脚で体幹部へのアプローチも行います。
肋骨のアライメント、下部体幹・腹壁が成立しているかどうかがポイントですが、
また今後のコラムにて紹介していきます。