慢性期CVAへのリハビリの効果はあるのか?

2019年12月11日 yoshihiro

慢性期CVAにリハビリの効果はあるのか?

 

 

この疑問は生活期のリハビリに関わるセラピストであれば、

一度は考えたのではないでしょうか?

 

 

 

 

研究論文に興味のあるセラピストはご存知でしょうが、

実はこのような素朴な疑問に対する研究は、

海外では割と検証されているようです。

 

 

例えば、

寝返り動作への介入は歩行動作へ汎化されるのか

とか、

慢性期CVAにトレーニング効果はどれくらいあるのか

といった研究がもう10年以上も前に行われているのです。

(2009 Mudgeら、2000 Dean、2003 Bassieなど他多数)

 

 

CVAの教科書の一つである「モーターコントロール(医歯薬出版)」には

慢性期CVAに関係がありそうな興味深い記述があります。

 

 

“神経学的障害後の移動性スキル回復の鍵は、

感覚・運動・認知の障害が持続していても、

前進、姿勢制御、適応性の課題要求を達成することを学習することである”

 

 

つまり、麻痺をどうにかするではなく、

これらの面においての向上を図ることが、

歩行を始め、

慢性期CVAの移動性スキル向上につながる可能性があるということです。

 

 

ここで先ほどの素朴な疑問に戻ります。

 

 

慢性期CVAにリハビリの効果があるのか?

という問いの答えを考えるに当たり、

始めに思い浮かぶことといえば、

麻痺のステージが変わらないのであれば、

果たして慢性期CVAにとっての良くなるとはどういうことか?という疑問です。

 

 

この問いに対しての答えは先ほどの記述から得られます。

 

 

1.麻痺のステージを向上させることが慢性期CVAにとっての良くなるではないということ。

2.良くなるのはスキルであること。

3.良くなるを達成するための鍵は多角的であること。

 

この3つが挙げられます。

 

 

実は慢性期CVAのリハビリに対する介入の効果はひとつではなく、

多角的な可能性が挙げられるのです。

 

 

これはとても前向きで画期的な思考の広がりです。

 

 

さらに前述したように、

課題に直結しないトレーニングの効果や、

量的なトレーニング(サーキットトレーニング)

の効果はすでに検証されています。

 

 

そこからも慢性期CVAに対しての効果が全くないということは、

とても言えないということがわかります。

 

 

臨床で患者さんに接していると、

もっと効果的なリハビリを提供できないだろうかと感じることがあるでしょうが、

実はそういった疑問に対する答えはすでに研究として出ているものもあるのです。

 

 

そのような情報にアンテナを張る習慣を身につけることが、

患者さんにより良いリハビリを提供することにつながります。

 

 

ただし気をつけたいのは、

情報を深掘りする習慣も身につけた方が良いということです。

 

 

例えば、

トレーニングの効果が実証されているとはいえ、

どんな運動でも良いわけではありません。

 

 

効果があるとされたサーキットトレーニングでは、

様々な種類の運動が、

そこそこの強度で患者さんに対して実施されています。

 

 

なんとなく重錘をつけて運動すればいいわけではありません。

なんとなく歩行練習を行えばいいわけではありません。

 

 

どれくらいの種類の運動を、

どのくらいの強度で、

どれくらいの頻度で実施したのか

まで確認する必要があります。

 

 

もし研究データと同じように臨床で実施できない場合は、

その研究は無駄なのかというと、

そうでもありません。

 

 

先述したように慢性期CVAの移動性スキル向上の鍵は多角的なのです。

 

 

運動だけの提供時間が担保できない場合は、

その他の要素を組み込むことでカバーできないか、

検証してみる価値はあります。

 

 

CCRAでお伝えしている姿勢制御への介入も多角的な介入の一翼を担っています。

 

 

姿勢制御への介入に加え、

量としての運動をトレーニングに加える。

さらに在宅生活に落とし込める環境設定(自主トレーニング含む)を行うことで、

多角的な介入となります。

 

 

このように捉えると、

慢性期CVAへの介入が前向きなものとなります。

 

 

リハビリテーションとは、基本的には前向きな思考だと個人的に考えております。

 

 

ぜひ情報にアンテナを張り、

皆さんそれぞれの臨床に合わせた前向きな活かし方を行っていただきたいと思います。

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

 

 

CCRA【脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ】関西地域認定講師

岡澤 頼宏