高齢者の転倒予防と姿勢制御

2019年03月27日 yoshihiro

こんにちは。

CCRA【脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ】関西地域講師の岡澤です。

 

CCRAでは姿勢制御を中心とした評価介入方法をお伝えしています。

この姿勢制御はCVAだけに必要な考え方ではありません。

基盤的な考え方のひとつですので、全ての人に存在するシステムです。

今回のコラムは、CVAで見るべきポイントである姿勢制御を高齢者の観点で紹介していきます。

 

 

 

 

■姿勢制御と高齢者

 

高齢者はリハビリテーションの現場で関わる機会の多い症例です。

この高齢者のリハビリを進める上で、転倒予防は大きなテーマの一つでしょう。

転倒予防を考える上で、姿勢制御という視点はとても役に立つ視点です。

 

あなたが高齢者の転倒予防を目的にリハビリテーションを進める際、

具体的などのような進め方をしていますか?

 

一般的には筋力トレーニングやバランス練習を行うことが多いのではないかと思います。

しかし、この一般的と言われている方法は、

必ずしも結果が伴う効果的な方法とは言いにくいのが現状ではないでしょうか。

 

姿勢制御に関する報告は、

そのような悩ましいリハビリの現状に可能性を与えてくれるものです。

今回のコラムで取り上げる報告は主に高齢者と若年者を比較したものです。

 

 

■若年者との比較

 

高齢者と若年者を比較した姿勢制御に関する研究の中で、興味深いものがありました。

それは外乱動揺時の戦略の違いです。

 

外乱動揺時、高齢者は若年者に比べ、大きな筋収縮で対応しようとするという結果が出ました。

また高齢者は若年者より極度に関節を固くする戦略をとるということがわかりました。

高齢者のバランスが若年者よりも悪く見える原因は、

この筋収縮の大きさと、身体を固める戦略をとっていることが原因だと考えられます。

 

器質的には、以下の2点が関与しているようです。

ひとつ目。

老化によるDNAの損傷が20%は起きている。

二つ目。

前庭系の細胞が70歳までに40%が減少している。

この2点が大きな要素となっています。

 

加えて、高齢者は予測的姿勢能力が低下していることも示唆されています。

これは随意的、不随意的なシステムどちらにも言えることです。

 

戦略や、器質的変化がこのような状況である一方で、

高齢者は若年者と比べ、筋力、可動域に違いがあります。

具体的には、

柔軟性が高齢者の方が乏しい。

疲労を起こしやすい。

最大筋力が小さい。

ということが挙げられます。

 

 

■高齢者のバランス低下~2つの要素~

 

まとめると高齢者が若年者に比べ転倒しやすいという背景には、

姿勢コントロールというシステムの差、

筋力・可動域という運動機能の差、

二つの要素があるということが言えます。

 

これは臨床上、一方のみの介入では不十分ということを示唆しています。

 

臨床では二重課題が転倒防止に有効との報告を耳にします。

これも運動機能のみの介入よりも効果的な関わりを探った結果判明したことです。

 

二重課題に関する報告の中に、高齢者の興味深い特性がありました。

 

それは、姿勢保持と認知に関する二重課題を高齢者に与えると、

多くの高齢者は、認知課題に対するものの低下はないにも関わらず、

姿勢保持に関する課題の成績が低下するというものです。

 

つまり高齢者は、

姿勢保持の課題を犠牲にして認知課題に取り組もうとする傾向があるということです。

 

二重課題を転倒予防に取り入れる際は、この報告を念頭に置いて介入する必要があります。

 

 

■高齢者のリハビリテーション~姿勢制御という視点~

 

これまで紹介した報告を見てみると、

高齢者の転倒予防を考えるにあたり、

姿勢コントロールに介入することはとても重要なことと言えます。

 

臨床で一般的に行われている筋力トレーニングや、柔軟性向上などの運動機能に対する介入に加え、

姿勢コントロールに対するアプローチを行うことで、

より効果的なアプローチとなることが伺えます。

 

 

今回のコラムは趣向を変え、

CVAで取り上げられることが多い姿勢制御というキーワードを、

高齢者に対するリハビリテーションの観点で紐解いてみました。

 

お読みいただき、ありがとうございました。

 

 

CCRA【脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ】関西地域担当講師

認定理学療法士

岡澤 頼宏