脳卒中片麻痺の弛緩性歩行の改善

2019年09月27日 yoshihiro

みなさんは脳卒中後遺症の歩行姿勢で、

下部体幹が潰れている方や、腰部を過剰伸展し固めている方を、

見かけたことがあるでしょうか?

 

 

 

私は、よく見かけます。

 

 

■  下部体幹の潰れや過伸展の要因

なぜ下部体幹が潰れたり、腰部を過伸展してしまうのでしょうか。

 

 

皆さんなら、どう考えますか?

 

 

私が新人のころは、

体幹と股関節周囲の筋力が足りないからとしか考えていませんでした。

 

 

確かにそれもあるかもしれませんね。

 

 

しかし、原因はそれだけではありません。

 

 

私が文献で調べた下部体幹が潰れたり、腰部を過伸展してしまう原因。

 

 

 

それは、

 

 

 

下部体幹と股関節周囲が弛緩していることによる、

体幹と股関節の協調性の低下です。

 

 

 

下部体幹や股関節周囲が弛緩していることで、

麻痺側の抗重力伸展反応や遊脚期の遠心的なコントロールが、

困難になります。

 

 

さらに、麻痺側のコントロールが困難となることで不安定性が生まれ、

麻痺側下肢に対する恐怖心。

 

 

これが、過剰収縮により関節を固めてしまう原因の一つです。

 

 

よって、恐怖心からくる過剰収縮が、

異常歩行パターンを形成してしまいます。

 

 

 

体幹の弛緩によって現れるパターンは、

次のようなことが挙げられます。

 

 

・体幹が屈曲位で潰れてしまうパターン。

 

・腰椎の過剰伸展で固定しているパターン。

 

・麻痺側の腹部が短縮しているパターン。

 

 

これらの問題に対応したアプローチを行うことで、

改善の可能性が広がります。

 

 

なぜ、これら3つのパターンが起こってしまうのでしょうか。

下記に、まとめてみました。

 

1.体幹が屈曲位で潰れてしまうパターンの問題点

・コアスタビリティーの低下

・背部と大腿部の不活動または萎縮

 

 

2.腰椎の過剰伸展で固定しているパターンの問題点

・コアスタビリティーの低下

・大腿直筋、腸腰筋、脊柱起立筋の過剰収縮

 

 

3.麻痺側の腹部が短縮しているパターンの問題点

・支持基底面の不安定性

・コアスタビリティーの低下

・非麻痺側の過剰努力

 

 

これらの問題点から示されている通り、

体幹と股関節周囲の機能は密接していることが分かります。

 

 

 

■  歩行を改善させる思考過程

 

歩行の改善を図るためには、

ロコモーターへの影響が少なくなるように、

パッセンジャーユニットを安定させることが大切です。

 

 

また、抗重力伸展反応を高め安定した立脚期を形成する。

安定した立脚期を形成するには、各関節のつり合いが取れている必要があります。

 

 

そして、遊脚期を形成するには、

下部体幹と麻痺側下肢の遠心的なコントロールの改善が、

重要とされています。

 

 

 

■  アプローチ方法一例

 

アプローチ方法の一例として、

麻痺側立脚期で下部体幹が潰れた患者さんの歩行を、

イメージしてみてください。

 

下部体幹が潰れ麻痺側骨盤が後退し、

麻痺側下肢をぶん回している状態だとします。

 

私のアプローチまでの流れは、

 

1.

立位にて、下肢のつながりと抗重力伸展反応の確認。

 

2.

立位にて非麻痺側上肢はベッド支持で、麻痺側立脚中期の状態で止まれるか。

その際、体幹の不安定性がないか確認しながら、股関節のつり合いを確認。

 

3.

上記評価の結果、

麻痺側立脚中期で体幹のやや前傾がみられ、体幹の揺れが観察された。

 

4.

コアスタビリティーの低下があることで、

抗重力伸展反応の低下がみられると仮説を立てた。

 

5.

仮説を検証するために、体幹へのアプローチを実施。

 

6.

再評価

 

上記の流れで実施しています。

 

 

今回、例に挙げた症例を評価した結果、

抗重力伸展反応が低下していることが分かりました。

 

 

私の仮説としては、

 

 

コアスタビリティーの低下による下部体幹の不安定性から、

麻痺側下肢を固めてしまうのではないかと考えました。

 

その結果ターミナルスタンスでの脱力が出来ず、

ぶん回し歩行となっていたのではないかと考えています。

 

 

アプローチとしては、最初に側臥位にて体幹促通を実施。

 

次に、背臥位にて体幹と臀部の促通を実施しました。

 

その後、立位で非麻痺側上肢をベッド支持にて、

出来るだけ歩行に近い肢位で、体幹と臀部の促通を実施。

 

アプローチ後は、下部体幹の安定性が向上するとともに、

麻痺側立脚期の安定性向上がみられました。

 

よって、ターミナルスタンスでの脱力が可能となり、

股関節の分離が可能となったため、ぶん回し歩行が改善したと考えています。

 

 

上記からも、体幹と股関節周囲の機能は密接していることが分かります。

 

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

CCRA【脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ】

認定インストラクター

八剱 誘起