だから必要!解剖学

2019年11月14日 yoshihiro

こんにちは。CCRA関西地域担当講師の岡澤です。

 

 

 

わたしは今モーターコントロール(教科書)を仕事の合間に読んでいます。

 

これは去年のお正月に購入したものですが、

1年10ヶ月が経った今、ようやく2/3が終わりました。

 

 

分厚い教科書を読むのは、楽なことではありませんが、

とても臨床に活かされるなと感じています。

 

 

 

さて臨床に出ると、解剖学が大切だということを

先輩や同僚との話で聞いたことはありませんか?

 

 

確かに大切だな〜と思うことはあるでしょうが、

具体的にどう大切なのか、考えたことはありますか?

 

 

 

今回のコラムは現在進行形で教科書修行をしておりますわたし岡澤の経験から、

解剖学を学ぶ意義を臨床に照らしてお話しします。

 

 

 

 

複雑な問題が絡み合うCVAという症例は、

急性期から回復期、生活期に移るに連れて、

「もうこの患者さんに対して、できることは何もない」と感じられることが増えてきます。

 

 

増えてくるというのは、感覚的なもので、実際やれることがないとは言い切れません。

 

 

 

ではこの「もうできることが何もない」という状態は

どこから起きるのでしょうか?

 

 

 

結論から申しますと、

解剖学の知識が不十分だからということが一番に挙がります。

 

 

 

CVAに特化して言いますと、脳が損傷を受けた部位によって臨床症状は現れます。

 

 

 

痙縮や可動域制限、姿勢の変位などが目に見える症状でしょう。

 

 

 

一方で、目に見えない症状もCVAにはたくさんあります。

 

 

高次脳機能障害や感覚障害などがそれに当たります。

 

 

何かしらの動作に問題がある場合、

あなたはその評価をどのようにして進めますか?

 

 

 

若かりし頃のわたしは、

目に見えるものから評価することが多かったです。

 

 

 

例えば運動麻痺があれば、

ブルンストロームステージの評価や、筋緊張の評価、関節可動域や筋力といったものです。

 

 

いわゆる一般的に行われる評価スケールについて検査測定を行います。

 

 

 

一方で目に見えにくい問題についての評価は、あまり行いませんでした。

 

 

 

問題が起きているかどうかわからない。

どうやって評価すればいいかわからない。

という理由からです。

 

 

 

このような流れで評価するとどんな問題が起こるでしょうか?

 

 

 

いわゆる目に見える問題だけで、解釈しようとすることになります。

 

 

 

つまり、麻痺の分離、筋緊張、関節可動域、筋力といったものだけで

問題をまとめようとするわけです。

 

 

 

なぜそのような状況になっているのかを考えるとき、

狭い範囲で思考を行うと、そこから挙げられる選択肢は自ずと少なくなります。

 

 

逆に、問題が起きている原因を広い範囲で思考すると、

考えられる可能性は自ずと幅広い選択肢が挙がります。

 

 

状況判断する上で、狭い選択肢から原因を探ることをすれば、

すぐに煮詰まることは想像しやすいことでしょう。

 

 

 

具体的にCVA患者さんの問題の原因を探る作業を、

狭い範囲で行ってみるとこんなことが上がるのではないでしょうか。

 

 

「もう発症から○ヶ月経ってるから分離は進まない」

「筋緊張が高いから関節可動域は上がらなさそうだ」

「緊張が高いから筋力が発揮しにくいのはどうしようもない」

 

 

このような後ろ向きな考察では、

患者さんに有意義なリハビリアプローチは提供することは難しいでしょう。

 

 

 

このような事態に陥らないために必要なのが解剖学なのです。

 

 

例えば、

「姿勢制御システムは両側性支配だから介入の余地はある」

「大脳小脳ループの損傷は姿勢制御に影響を及ぼす」

「放線冠損傷は運動麻痺、感覚障害、姿勢制御、認知機能に影響を及ぼす」

ということを知っていれば、行うべき評価は広がるでしょう。

 

 

 

生活期の現場など、画像診断ができない環境でも、

臨床像を照らし合わせることで、より症例像が明確になるでしょう。

 

 

つまりやるべきことがないと感じてしまう場合、

まずは十分に行うべき評価は行なっただろうかと自問自答するべきでしょう。

 

 

 

もし、かつてのわたしのように、

目に見える問題にのみ目が向いていた場合は要注意です。

 

 

目に見える問題が起きている背景には、

目に見えにくい、介入すべき問題が数多く存在しています。

 

 

目に見えにくいものを見るために必要なのが、解剖学なのです。

 

 

 

特にCVAの場合、脳の機能を知ることは必須です。

 

 

 

もしかすると歩行時に足が降り出しにくいのは、

麻痺の分離ではなく、体幹に問題があるためかもしれません。

 

 

もしかすると、洗面がうまく行えないのは、

腕の筋力が発揮しにくいのではなく、

肩甲骨の安定化に限られた力が削がれているせいかもしれません。

 

 

解剖学を学ぶことで患者さんの見え方が変わります。

 

 

 

ただし解剖学だけでは解釈が難しいこともたくさんあります。

 

 

 

この難しいと感じる壁を破るには、

知識の研鑽、技術の研鑽、臨床経験を積む

という3ステップが必要です。

 

 

 

壁を感じたときはこの原点に立ち返ることに尽きるでしょう。

 

 

わたしもまだまだ修行中ではありますが。

 

 

 

お読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

CCRA関西地域担当講師

岡澤 頼宏