効果のあるADL練習の条件

2020年01月16日 yoshihiro

こんにちは。

CCRA【脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ】認定インストラクターの岡澤です。

 

少し前になりますが、リハビリ分野のトピックスのひとつとして、

「なんちゃってリハビリはよくない」というものがありました。

 

2017年に理学療法士協会会長のメッセージの中で取り上げられ、話題となった言葉です。

 

いわゆる、「リハビリ専門職が散歩の付き添い人にとどまっているのはいかがなものか」ということです。

 

僕個人としてもとても共感のできるものでしたし、

専門職として他職種に認識していただく上でも、非常に注意すべきことだと意識しております。

 

この散歩付き添い人ですが、具体的に何がそういった行動に繋がってしまうのでしょうか?

 

どのように考えて歩行練習を実施するべきなのかという点で、

過去の論文の中で、非常に有意義なものがありました。

 

研究は2009年のもので、

内容は「機能的運動機構スキルを改善する為の運動プログラムの要件」です。

 

ざっくりいうと、意味のあるADL練習としての条件というところでしょうか。

 

意味のあるADL練習としての条件の要点は以下の3つです。

1.やりがいがある。かつ運動障害を解決するのに注意を引く事ができる。

2.課題の要求が患者の能力に適切。

3.問題解決と関連する特定の反復練習を積極的に行えるもの。

 

僕はこれを読んだ時に、なるほどな~と感心しました。

CVAはいわゆるプラトーを過ぎた症例は機能的な改善は見込めないとの理由から、

漫然としたリハビリが提供されがちだということを聞きます。

 

冒頭の“なんちゃってリハビリ”と通じるところがありますが、

この意味のある運動療法としての条件に照らし合わせると、

その理由が明確となります。

 

1を意識したリハビリプログラムを提供する為には、

絶対に欠かせない事が2つあります。

 

それはなんでしょうか?

 

それは、

運動障害を把握しておくことと、

運動障害を解決する為の手段を知っておくことの2点です。

 

この運動障害は単純に筋力低下とか、関節可動域制限とか、運動麻痺ということではなく、

もっと質的なものの方が文脈にあうでしょう。

 

例えば、右下肢に荷重しにくいとか、

体幹の支持性が低いとか、

いわゆるひとつの検査測定だけでは、

問題かどうかわからないといったたぐいのものです。

 

 

2、3はリハビリの中では、特にADL練習を行う上で絶対必要なことです。

 

どうしてその動作を選択したのか。

その動作をどのような形で、どれくらいの介助下で、何回行うのか。

 

このようなところまで考えた上でのADL練習となっているかどうかです。

 

さぁどうですか?あなたのADL練習は大丈夫ですか?

 

なんちゃってリハビリがなぜ非難されるべきなのか、

これで明確となったのではないでしょうか?

 

つまり“なんちゃってリハビリ”は、

リハビリプログラムに至るまでの思考過程があまりにも浅いということです。

 

おそらく次のような思考過程で、

“なんちゃってリハビリ”に至っているのではないかと推測します。

 

 

例として、

CVAの既往があり、独歩練習をプログラムとして実施している人を挙げます。

 

発症から半年以上経過している。

下肢の支持性低下がある。

介助はいらないけど歩きにくさがある。

 

麻痺はプラトーだし、直接介入しても効果はなさそう。

歩行練習は下肢筋力を発揮する内容だし、反復練習をすることで持久性にも介入できる。

 

だから歩行練習をしてもらおう。

 

 

このようなところでしょうか。

 

 

この思考過程は先程の3ポイントを照らし合わせると、

次のような不足点が出て来ます。

 

 

下肢筋力低下は下肢そのものに問題があるのか、それとも体幹も含めた身体の繋がりに問題があるのか。

協同運動パターンに依存しているのか、それとも代償的に下肢筋力が発揮しにくい歩行となっているのか。

身体の繋がりに問題がある場合、その問題に対する介入は歩行練習(独歩)で可能なのか。

それとも別のADL練習の方が適しているのか。

ADL練習の難易度としてはどれくらいの難易度が適しているのか?

どれくらいの強度で、どれくらいの協同運動パターンが表面化するのか?

逆に、どれくらい難易度を下げれば、協同運動パターンの表面化はみられなくなるのか?

それらを踏まえて、どれくらいの回数をどんな形で練習するのが、症例にとっての適切なのか?

 

これはざっと挙げた一部ですが、

考えるべきポイントがたくさんでてきましたね。

 

独歩で練習する事が悪いわけではありません。

 

その練習の中に、症例の抱える課題を解決するためのエッセンスがどこまで含まれているのかが重要です。

 

できれば他職種に伝わる言葉で説明できることが望ましいです。

リハビリ職にしか伝わらないものは社会には重要性は理解されません。

 

 

CCRA【脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ】では、

「リハビリセラピストが患者さんに説明できる」を目標にセミナーを開催しております。

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

 

CCRA【脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ】

関西地域認定講師

岡澤 頼宏