右片麻痺と左片麻痺その2〜失行症について〜

2019年11月03日 福田俊樹

前回は左片麻痺の方に多い、半側空間無視についての考え方、介入方法の一例について紹介しました。

>>>右片麻痺と左片麻痺その1〜半側空間無視について〜

 

今回は右片麻痺の後遺症者の特徴について紹介したいと思います。

 

右片麻痺の特徴

左半球損傷で代表的な後遺症といえば、失語症です。

脳卒中のリハビリに携わっていると、ほとんどの方が出会ったことのある後遺症かと思います。

 

他に代表的な後遺症として失行症が挙げられます。

 

物品の使い方を間違えてしまったり、模倣ができなくなったりする症状として

学校で習ってきていると思いますが、実は失行症はそれだけではありません。

 

失語症の方の場合、大多数の方が失効症を併発しており、様々な症状を呈しています。

失行症がある方はどことなく、身体の動きがぎこちない状態となり、

一見、関節運動の分離は可能でも動作を行うことが出来ない場合は失行症が原因の場合もあります

 

失行症の分類

失行の分類は様々なものがありますが、

古典的なものとして観念失行、観念運動失行、肢節運動失行の3つに分けられています。

 

・観念運動失行は無意識的では動作可能ですが、意識させるとうまくいきません

・観念失行は行為の順番や道具の使用手順が分からなくなります

・肢節運動失行は習熟した運動形式が障害された状態で、ボタンが留められなくなる、靴下がうまく履けなくなるなどの症状が起こります

 

ただ失行症は様々な分類に分けられており研究者によって意見が異なっています。

 

何より大事なことは、例えば観念運動失行と同定できたところで、

どんなアプローチを行えば良いかが確立されていないことが事実としてあります。

 

失行症の責任病巣

近年の研究にて失行症では左前頭頭頂ネットワークの破綻により、

運動結果の予測情報と感覚フィードバックを統合する機能に低下があること、

また感覚と運動を統合する機能に障害があると重症度が増すことが分かってきました。

 

つまり、感覚と運動を統合する機能に対してアプローチすることが

失行に対してアプローチできる可能性があるということです。

 

感覚と運動の統合

感覚と運動の統合とは内部モデル(脳内における外界環境のモデル)における

運動の予測情報(遠心性コピー)と実際の運動時における感覚フィードバックの統合です。

 

物凄く、ラフな例を挙げると、

自分で脇をくすぐってもくすぐったくならないのは

自分でどんな感覚が入るのか予測できているからということです。

 

これらに障害があるということは感覚フィードバックが上手く処理できていない、

もしくは運動の予測が困難になっている、という可能性があります。

 

実際の一例

書字動作をする際に、

上肢が動かずに体幹が動いて書字を行なってしまう場面を想定してみましょう。

右片麻痺の場合、比較的散見する例かも知れません。

 

上肢の各関節がある程度動かせるにも関わらず、

体幹を動かして動作を行なっている場合、失行症の疑いがあります。

 

評価・介入方法の考え方

感覚フィードバックに障害が無いかの判断として、

肩関節や肘、手関節の運動覚や位置覚の検査を行う。

 

運動の予測に対しての判断として、こちらで正しい動作を提示してみて、

それを良い動作か判断できるか、また自分の動きは同じ動きになっているか、

どの関節が良く動いているかなどを聴取してみると良いでしょう。

 

千差万別ですので、具体例を挙げることは難しいですが、

とても重要な点はどれかにエラーがあった場合、

本人が理解できている感覚や運動からそのエラーを補正するような介入を行います。

 

つまり残存している機能を用いていかにネットワークを形成できるかということです。

 

まとめ

2回に分けて左片麻痺と右片麻痺の場合に注意すべきポイントを紹介してきました。

普段の臨床の際に頭の片隅に入れていただけると

より目の前の現象の理解が進むかと思います。

 

お読みいただきありがとうございました。

 

CCRA代表 福田俊樹