From.CCRA 福留良尚
脳卒中リハの中でも、特に時間を掛けるであろう麻痺側への荷重練習。
立位、歩行といった生活範囲を拡大していくための重要なアプローチです。
シリーズでその理論と治療の実際についてお伝えしています。
支持性を高めるためには、無意識で行われる筋活動、APA(先行随伴性姿勢調節)の働きが大切であることを第2回でお伝えしました。
そのAPAの働きは、感覚情報が脳に入力されることが必須です。
情報が入力されなければ、出力として適切な信号を伝えることは出来ません。
荷重練習を行う準備として、先ずは支持基底面の状態、つまり足底を整えることを行います。
片麻痺の患者さんは、立位や歩行といった抗重力的な活動が難しくなります。
ですので、足底の使用頻度が格段に落ちます。
するとどうなるか?
先ず、筋の萎縮が起き、足根骨間の可動性が失われ、筋の固有受容器の閾値が上がります。
脳のダメージによる感覚障害と、末梢の感覚受容器の両方の問題です。
この二つは、足底からの感覚情報が上行しやすいように、整えておきましょう。
麻痺の強い患者さんは、立てない状態での生活をしばらく強いられます。
発症後うつ傾向の方は、リハ以外起きないという方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方を急に立位にすることは、心理的にも、また循環の観点からも慎重に行うべきです。
これによる体への負荷は大きなものですので、補装具等を利用して徐々に立位に慣らしていくようにします。
装具を使用すると、足底からの感覚情報は少なくなるかもしれませんが、この時練習したいのは、骨盤の操作です。
セラピストは麻痺側の骨盤をサポートし、患者に非麻痺側の骨盤前後に動かしてもらうよう指示。その際、大きな動きではなく、小さい動きの中で、麻痺側股関節周囲の筋活動を引き出していく。
前後が慣れてきたら、今度は左右へ動かしてもらう。この時大切なのは、骨盤が傾斜してしまうポイントまでいくと、APAが制御できない範囲になってしまうので、骨盤の傾斜には要注意。グラつかない範囲の中で繰り返し行います。
いきなり「良い方の足を前に出しましょう」と指示すると、患者さんは努力的な方法でしかステップ出来ません。
かと言って「しっかり踏ん張りましょう」という声掛けは、第2回でお伝えしたように不味いです。
そこで、ステップの最初は、非麻痺側の踵を浮かせることから始めましょう。
しかし、踵を浮かせようとすると、麻痺側への重心移動を避けようとつま先へ重心を乗せかねません。
この時大切になってくるのが、事前に練習しておいた「骨盤の操作」です。
骨盤を前に出す練習の感覚で踵を上げるようにすると、極端な異常姿勢を取らずに麻痺側へ重心移動することが可能になります。
もちろんAPAの機能が発揮され、麻痺側のコントロールが出来る範囲内のことです。
出来ていないとどうなるか?
非麻痺側の骨盤が下に落ちる、いわゆるトレンデレンブルグのような状態になります。
こうなると、練習ではなく代償動作の強化になってしまいますので注意です。
少しずつ慣れてきたら、ステップを踏むようにして範囲を広げていくようにします。
大切なのは「骨盤がグラつかないAPAが働いている範囲」で、動いてもらうことです。
「麻痺側への荷重練習」をシリーズでお届けしてきました。
いかがだったでしょうか?
もしよろしければ感想や質問を頂けると嬉しいです。
メール→yoshihisa.fukudome@iairjapan.jp
片麻痺の患者さんは、個別性に富んでいます。
お伝えした方法では上手くいかないことも多々あるでしょう。
「どうすれば?」に対して、違うアプローチを選択できるかが大切です。
脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ【CCRA】では、臨床現場に即したアプローチをお伝えしています。
それでは最後まで読んでいただけて感謝です。
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一般社団法人 国際統合リハビリテーション協会
常任理事 九州地区責任者 理学療法士
CCRA認定インストラクター
福留 良尚
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