骨盤のハンドリング「前傾と後傾」

2019年03月19日 yoshihisa.fukudome

From.CCRA 福留良尚

 

以前骨盤前傾のハンドリングについて記事を書きました。

要約すると以下の2点。

  • 前傾位になることが重要なのではなく、その過程において前傾の動きがあることが重要
  • セラピストが操作、強制しようとすればその動きは感じられない

全文を読まれたい方はコチラ。

>>>「骨盤前傾の間違ったハンドリング」

 

本日は反対の骨盤後傾のハンドリングについて。

普段「後傾へのハンドリングなんてしない」という方も、以下のような患者さんは見たことあるのではないでしょうか?

  • CVA
  • 全体的に筋緊張が高い
  • 座位や立位姿勢では腰部過伸展で固定

こんな患者さんは、後傾へのハンドリングが必要です。

 

何故なら、どのような姿勢や動作においても、固定している状態でのメリットはありません。

静的な座位や立位においても、必ず微細な重心移動や、次の動作への準備が行われているからです。

 

人は常に同じ状態を保ちながらも動き続けています。

この話、詳しくすると時間が足りませんので、興味のある方は以下をご参照ください。

>>>「動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか」福岡 伸一

 

何故骨盤後傾のハンドリングが必要か?

固定されている状態ではいけない、というのはお分かりになるかもしれませんが、CVAのハンドリングは前傾を促すことが優先されている印象です。

後傾に促すことの必要性を考えたときに、重要なのは「重力」です。

 

先ず、内臓には重力を感じる受容器が存在するといわれています。

腰部を過剰な伸展で固定している患者さんは、重力による上からの圧を感じにくくなっています。

これは大切なのでもう一度。

 

過伸展で固定している患者さんは重力を感じていない

 

内臓受容器について(コトバンク 世界大百科事典内の内臓受容器の言及【感覚】より)

シェリントンCharles Scott Sherrington(1857‐1952)は,受容器と刺激の関係から受容器を外部受容器exteroceptor(体外からの刺激に反応する受容器)と内部受容器interoceptor(身体内部からの刺激に反応する)とに分けた(1926)。(中略)後者は固有受容器proprioceptor(筋肉,腱関節,迷路などの身体の位置や,四肢の運動の受容器)と内臓受容器visceroceptor(内臓にある受容器)に分けた。

 

骨盤内にある臓器、正確には腹腔内にある臓器は、重力による上からの圧を感じる機能を有しています。

もし人が上から押さえられたらどうなるでしょう?

一度沈みますよね?

沈みつつ姿勢を保とうとする。

この過程において「後傾」が重要になってきます。

 

つまり、私たちが重力に抗しながらも通常の姿勢を保つことが出来るのは、内臓の受容器によって感覚情報が伝わり、その重さを受け止めつつ姿勢を保つために腹部の内圧が高まるからです。

 

その結果として、動きとしては見えない程度の骨盤後傾が出現するわけです。

 

骨盤後傾しつつ腹部の筋緊張を高める運動療法

座位や立位で骨盤を後傾させるハンドリングは、それなりのスキルが必要になります。

これらのテクニックは実際の研修会場でお伝えしています。

 

今回は簡単に促す方法をお伝えします。

患者の肢位:両膝立てての背臥位

殿部を離床させる、いわゆるブリッジ動作にてこの動きを促すことが出来ます。

 

方法

  1. 殿部を離床させつつ、ハムストリングスや大殿筋といった股関節伸展筋を刺激し、同時に足底にも圧を加えながら骨盤の後傾を誘導していきます。※この時注意しないといけないのは、背筋群の活動で腰椎が過伸展し、骨盤が前傾してしまわないようにしなければなりません。頭部を床に押し付けるような動きも間違いです。
  2. 麻痺側の下肢を膝で挟むようにして、骨盤の傾斜や膝が動揺するのをサポートしながら徐々に離床させていくように誘導しましょう。

この動きが可能になると、立ち上がりや座り込む際の骨盤の動きがスムーズになります。

 

骨盤の前傾のハンドリングでもお伝えしましたが、操作や強制では患者さんの動きは引き出せません。

無理矢理良い姿勢を取らせたり、無理矢理動かしては意味がないということです。

「まだまだ経験も浅くて難しい」という方は、コチラを参考にしてみてください。

 

それでは最後まで読んでいただけて感謝です。

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脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ

認定インストラクター 九州地区責任者 理学療法士

福留良尚

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