抗重力伸展活動(姿勢制御)を高める方法

2019年02月03日 福田俊樹

地球上に存在する以上、常に働く作用、

それは「重力」です。

 

脳卒中の後遺症者は中枢神経システムの損傷により、

重力に対して適切に反応が出来なくなります。

 

そのため、体幹が潰れたような、

もしくは膝が抜けるような不安定な屈曲位や

逆に過剰な伸展活動でガチガチに身体を固めて

姿勢をとることも多いです。

 

今回は重力をコントロールするシステムである「抗重力伸展反応」について紹介します。

 

抗重力伸展反応とは

姿勢制御のシステムであり、

文字通り、重力に対して抗する反応です。

抗するというと、力一杯行うイメージもありますが、

重力に対して鉛直線方向に身体を維持する反応といえます。

 

また、私たちが自然に立つことが出来たり、姿勢を崩さずに走ることができるのは

抗重力伸展の反応が無意識かつ、安静時にも動作時にも常に働いているからです。

 

抗重力反応を高めるためには

抗重力活動は人の活動のベースとなるシステムですので、

セラピストは必ず介入する必要があります。

 

抗重力伸展反応を高めるために

・ブリッジ、キッキング、スクワットなど伸展活動を行う

・可能な限り離床する(抗重力位をとる)

・歩行をする

 

などのアプローチなどが挙げられますが、

抗重力伸展反応を高めるために抗重力や伸展の活動を行っている印象であり、

根本的な原因を踏まえたアプローチには今一歩及びません。

 

難しくて出来ないことを無理にさせる訓練は回復には結びつきづらいでしょう。

 

抗重力伸展活動の改善を行うために、

どのようなシステムなのか紐解いていきたいと思います。

姿勢制御の神経伝導路

先ほど、抗重力伸展活動は姿勢制御であり、無意識的な活動であると紹介しました。

筋肉が働く活動は意識的な活動と無意識的な活動に分かれます。

 

意識的な活動とは随意運動のことで、司る神経の伝導路は皮質脊髄路、

学生の時に1度は耳にした錐体路が代表的です。

一方無意識的な活動とは姿勢制御のことで、司る神経の伝導路は網様帯脊髄路や前庭脊髄路です。

 

つまり抗重力伸展活動を高める為には網様帯脊髄路や前庭脊髄路の興奮を高める必要があります。

 

前庭脊髄路の興奮から介入方法を考える

前庭脊髄路の前庭は聞いた覚えがあるかと思います。

脳神経の第Ⅷ、内耳神経に含まれる神経の一つで、バランスに寄与します。

具体的には傾きに対して反応する神経です。

 

身体が傾いた際に前庭脊髄路は興奮して、抗重力筋活動を高め、

傾かないように姿勢を制御しています。

 

つまり身体の傾き、つまり動作を行っている際に前庭脊髄路は興奮しやすいといえます。

 

また、前庭脊髄路はヒラメ筋などの抗重力筋の反射を高め、伸展活動を誘導する為。

これらの筋群が反応しやすいように筋の状態を調整しておくと、抗重力伸展活動はより働きます。

ヒラメ筋はとりわけ、末梢部であり麻痺の影響を受けやすく、アライメント異常、

短縮や変性を引き起こしやすい部分です。

 

介入の一例

1.立位(足関節荷重時)に下腿筋群の張りを確認し、

皮膚を緩ませるように下腿軸に対して捻る

 

2.つま先、踵の間を移動するように前後へ重心移動する

 

3.崩れがなければステップ位にて2を行う

 

下腿三頭筋が反応しやすい状態を作りながら、身体の傾きが起こる動作を入れることで、

前庭脊髄路の興奮や働きを活かし抗重力伸展活動を高めるチャンスがあります。

 

まとめ

抗重力活動を高める方法は他に様々あります。

今回のように、一つずつ丁寧に紐解くことで、アプローチの精度は高まっていきます。

 

お読みいただきありがとうございました。

 

CCRA代表 福田俊樹